2023年6月に新たなマッチングアプリが誕生した。その名も「人狼マッチ」。
何を隠そうこのアプリは、オンライン対戦ゲームの「人狼ゲーム」と男女の「出会い」を掛け合わせたマッチングアプリなのだ。
「??」と疑問が浮かぶ方も多いと思うが、この人狼マッチはリリースから2週間で会員数が1万人を突破するなど、今大きな話題を集めている。
そこで今回は、そんな人狼マッチを発案したアイザック株式会社の湯浅さんに、人狼マッチの開発秘話や、自身の溢れるほどの人狼ゲーム愛についてお伺いした。
顔やスペックよりも中身で出会いたい人が集結。一日12回もゲームする女性も
ー人狼マッチは、どのようなマッチングアプリなのでしょうか?
湯浅さん(以下、湯浅):人狼マッチは一言で説明すると、「人狼ゲームをしながら恋愛ができるマッチングアプリ」です。
男女6人で恋愛人狼をプレイしていただき、ゲーム終了後に気になる異性の方がいれば「いいね」をしてもらって、お互いに「いいね」し合えばマッチングする、という仕組みです。
ーマッチングアプリで「人狼ゲーム」をプレイするのは、面白いコンセプトですね。
湯浅:従来のマッチングアプリだと、ルックスで選びたくなくてもルックスで選ばざるを得ないことが多かったと思うんです。男女共に実際まず見るのって、なんだかんだ顔ですし。
ルックスを見て、年収を見て、スペックを見て、みたいな。
けど、ルックスを見る前に人狼ゲームをプレイすれば、相手の人となりとか笑いの感覚みたいな、付き合っていくうえで重要な要素がストレートに伝わるじゃないですか。なので、普通の流れで出会うよりも面白いし、異性と会うハードルも低くなるんじゃないかなって考えて、こういった仕組みにしました。
ー確かに、最初にお互いのことがある程度わかっていたら、マッチしたあとも会話は弾みそうですよね。
湯浅:そうなんですよ。
もちろん、出会いの数では従来のマッチングアプリには劣るんですが、一つひとつの出会いがトキメクというか、ちゃんとストーリーがある出会いを提供できるのが、人狼マッチの強みかなと思っています。
ー男女比や会員の年齢層もお伺いできますか?
湯浅:男女の比率的には6:4くらいですね。年齢層は25~35歳くらいが一番多いですね。
あとは、人狼ゲームへの1日の参加数は女性の方が多くて、平均で5、6回、多い人だと12回っていう人もいます。やり始めると止まらないけど、辞め時が分からない。でも、ゲームに参加するほうがいろんな人とマッチングできるし、楽しいみたいな感じで。
ー12回ってすごいですね(笑)
湯浅:ゲームは最長でも15分くらいで終わるように設定しているので、短時間でサクッと楽しめるからこそ、12回もプレイできるんだと思います(笑)。
異性の性格や人柄が丸わかりになる仕組みが盛りだくさん
ー人狼っていわゆる「ガチ勢(本気でプレイする)」ユーザーが多い印象なんですが、人狼マッチでもガチ勢は多いんでしょうか?
湯浅:もちろん一定数はいるんですけど、そもそもの前提としてガチ勢がやるアプリではないんですよね(笑)。人狼マッチでの人狼は、あくまでも異性とマッチングするための「手段」なので、初心者でも楽しめるような機能を入れるように意識しています。
例えば、初対面の男女でこっそり人狼になった人同士が作戦会議する仕組みを入れたり、初対面でも会話が弾むような「お題」を楽しめるようにするなど、ユーザーの皆様が楽しくおしゃべりできる仕様を考えています。
なので、ガチ勢の方がめちゃくちゃ論理的な、筋が通った話をすると、逆に吊られることとかあるんですよ(笑)。
ーそれはそれで、逆にかわいそうな気もしますが…(笑)。
湯浅:確かに(笑)。
ーけど、男性の場合だと、そういう熱くなったガチ勢を上手くいなせる人はモテそうですね。
湯浅:そうそうそう! そうなんですよ!
場を回せる人が必ずしもモテるわけではないんですけど、みんながぐいぐいいっている中で、上手に議論しようとしていたり、話が逸れたらやんわりと元に戻そうとしている人とかが1人いると、ちょっと光って見えたりするんですよね。
ー人狼マッチでは、良くも悪くもお互いのパーソナルな部分がさらけ出されてから恋愛に臨めるんですね。
湯浅:そうですね。
他のマッチングアプリにはない特徴として、異性の熱くおしゃべりしている姿って、本来は付き合ったあとでしか知れない、その人のパーソナルな部分だと思うんですよ。
例えば、喧嘩するときはこういう感じで話すんだとか、いつもは冷静なのに話し合いのときはすごい急にめっちゃ熱くなるタイプなんだとか、落ち着いてみんなをまとめようとするタイプなんだとか。
「この人、かわいいパンダのアイコンなのに、こんなガッツリ嘘つくのか!」みたいな(笑)。
ー確かに、付き合う前にそこの部分まで知れるのは面白いですね。
湯浅:これは他のマッチングアプリだと、なかなか見えてこない部分だと思いますね。
あとは、複数人でプレイする恋愛人狼は、同性がどういうふうに振る舞っているのかを見るのも意外と面白いんですよ。
「あ、なんかこいつ、女の子いるからカッコつけてるな」とか、「いや、さすがにそれは媚びすぎてて引くわ」とか(笑)。
けど、逆にそういう部分をツッコめば、普通に同性同士で盛り上がったりもするんですよね。「いやいやいや(笑)」みたいな(笑)。
ーいろんな楽しみ方がありますね(笑)。
原点は、オフ会での“キュン”
ー「人狼ゲーム」×「マッチングアプリ」の組み合わせはとても興味深いんですが、人狼マッチを考えられたきっかけは何かあったのでしょうか?
湯浅:元々、私自身が人狼ゲームにハマっていたことがあってそれがきっかけですね。
私が人狼ゲームを初めてプレイしたのは高校時代なんですけど、一回始めたらすごくハマっちゃって。
ー確かに、人狼ゲームってハマりやすいというか、突き詰めたくなる魅力がありますよね。
湯浅:そうなんですよ!
やればやるほど強くなるわけでもないのが、また奥が深いというか…
「誰かこの中に嘘をついている人がいる!」っていうドキドキだけで、ごはん何杯でも食べれますね。
ー愛がすごい(笑)。ちなみに、高校時代に人狼ゲームをプレイしようと思ったきっかけは何かあったのでしょうか?
湯浅:高校時代に友達と山小屋を借りて遊んだときに、誰かが「人狼やろう」って言い始めたんですよ。
そのときは「聞いたことあるなぁ」程度でプレイしたことはなかったんですけど、何となく始めたらめちゃくちゃハマってしまって。最終的には、人狼のオフ会にも参加しました。
ーすごいハマり方ですね(笑)。
湯浅:はい(笑)。
私のnoteにも書いているんですけど、そのオフ会で人狼ゲームをしていたら、とある男性にトキメいたんですよね。
ルックスは全然タイプじゃなかったんですけど、人狼ゲーム中の話し方とか考え方がすごく素敵で、ガチ勢に比べるとほぼ初心者だった私にも優しく話してくれて、めちゃくちゃキュンキュンしちゃって。
あ、自分ってチョロいなって思った体験ですね(笑)。
ーでは、そのときの湯浅さんのキュンキュンが、人狼マッチの原点になっているんですね(笑)。
湯浅:そうですね。
そういう体験があったから、「人狼ゲームを出会いのきっかけにできるようなお店をいつかやりたいなぁ」って、社会人になってからも漠然と思っていたんですけど、今の会社に入るタイミングで社長に企画を持ち込んでみたら、「面白そうじゃん」って言っていただいて。
そこから、私がPM(プロジェクトマネージャー)に就任して、アプリがリリースされて、今に至るっていう感じですね。
何よりもまずは、キュンキュンしてほしい!
ー人狼マッチのリリース時には、どんなことに苦労されましたか?
湯浅:一番は、私自身がマッチングアプリを利用したことがなくて、知識がまったくなかったことですね。
人狼ゲームに関してはよく知っていたんですけれど、マッチングアプリに関しては何も知らない状態だったので、まずはマッチングアプリについて勉強するところからはじめました。「みんな、どんなところでキュンキュンしてるのかなぁ」とか。
なので、最初は人狼ゲームとマッチングアプリを融合させることが難しかったですね。
ー湯浅さんご自身は、アプリ開発を経験されていたんでしょうか?
湯浅:全然です。むしろ私は営業畑でずっと働いてきたので、最初にこの会社に入ったときも、「別のサービスのテレアポの責任者として入ってくれ」って言われていたんですよ。
けど、社長に「こういう企画考えてるんですよね」って軽く言ったら、あれよあれよという間に人狼マッチのPMになっていました(笑)
ー人狼マッチを運営するうえで、特に意識していることはありますか?
湯浅:大きく2つあって、まずはユーザーの質ですね。
人狼マッチの場合、マッチしてやりとりをする前に人狼をするわけなので、いわゆる「変な人」がたくさん入ってくると、そもそもゲームにならないこともあるんですよね。
なので、人狼マッチでは、最初の人狼をする前に本人確認書類を提出してもらって、登録審査を行っています。
もう一つは、人狼ゲーム未経験の人でも楽しめる設計にすることです。
特に女性の場合は未経験の方が多いんですけれど、いわゆるガチ勢が多いと、どうしても流れを仕切って、粛々と人狼が進んでいきがちなんですよ。けど、それって初心者からすれば、なにも楽しくないんですよね。
なので、先ほどもお伝えしたように、人狼ガチ勢はできるだけ少なくして、ちゃんとキュンキュンできるポイントを作ることは意識しています。
例えば、初心者の方が占い師になったときに、騎士の男性に守られて「大丈夫です。なんかあっても、ついてきてください」とか言われたりしたら、キュンキュンしませんか?
ー確かにそうですね(笑)。
湯浅:従来のマッチングアプリだと、スワイプして見定めて出会うっていうのが中心だったと思うんですけれど、人狼マッチはちゃんと「楽しい」とか「キュン」が先にあるっていうところが、ポイントですね。
あとは、キュンキュンとは違うかもしれませんが、女性1:男性5の比率になったときは、その女の子が姫として扱われる、っていう世界があるらしいんですよ(笑)。
ー姫って(笑)。
湯浅:どれだけその女の子が怪しくてもその子には絶対に投票しなかったり、騎士の人も本来は占い師を守るべきなのに女の子を守ったり、「○○ちゃんを追放できるわけないでしょ!」みたいな(笑)。
ー人狼ガチ勢が聞いたら、間違いなくキレるでしょうね(笑)。
湯浅:でしょうね(笑)。
なので、人狼という観点で見れば緩いんですけど、出会いという観点で見たらちゃんと楽しくて、ゲームが終わった後の話題になるぐらい、記憶に残る出会いを提供できているのかなと思いますね。
例えばトランプだと、トランプ自体がないと始まらない、将棋やオセロだと複数の人で楽しめない。そういった中で、人狼ゲームは言葉があれば楽しめる。かつ、複数人で密なコミュニケーションをとるには最適だと思っています。
ーでは、最後に人狼マッチの今後の目標についてお聞かせください。
湯浅:容姿やスペックではなく、ゲームを通して相手の中身を知りながら、ひとつひとつの出会いに物語を作る。世の中の常識を変えるような幸せな出会いを、たくさんの方々に提供することです。
まだまだ改善点はいっぱいあるので、ユーザーの方の声も参考にして、人狼マッチをもっと楽しく、気軽に出会えるマッチングアプリにしていきたいです!
ーわかりました。本日はお時間いただき、ありがとうございました!
取材・文:ワダハルキ